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インドネシアの公益訴訟

オランウータンの森を守れ―ルーサーエコシステム訴訟の現場

文責 大久保規子

スマトラのアチェ州に位置するルーサーエコシステム(KEL:Leuser Ecosystem, Kawasan Ekosistem Leuser)は,アチェ州とメダン州にまたがる広さ260万ヘクタール以上に及ぶ地域であり(森林省令103号により地域の範囲が定められている),オランウータン,トラ,スマトラサイ,象などが生息する東南アジアで最も希少な森の1つといわれている。KELは世界自然遺産に指定されているが,同時にさまざまな鉱物資源の宝庫でもあり,今,道路建設,大規模な鉱業開発,パームオイル・プランテーション等による破壊の危機にさらされている。これに対し,KELで生活を営んできた9人の住民が,ジャカルタ地方裁判所に市民訴訟を提起した。グリーンアクセスプロジェクトでは,2017年3月2日から5日にかけて,この訴訟の原告,支援団体,地元の議員等にヒアリング調査を行った。

事件の発端は,アチェ政府が作成し,2013年にカヌン(Qanun)と呼ばれる州条例の形式で立法化した土地利用計画である(2013年カヌン19号)。国家レベルでは,KELは,3つの法制度によって保護されてきた。第1は1998年の大統領令33号であり,KELを保護すべき地域として規定している。第2は2006年の国法11号であり,KELは新たな開発を禁止し特別に保護すべき地域であると定める一方で,KELの管理権をアチェ州政府に付与する内容となっている。第3は2007年の政府規則26号であり,KELをアチェ州における5つの国家戦略区域(National Starategic Area)の1つに指定し,新たな開発を認めない区域として保護している。国家戦略区域にはさまざまなものがあるが,KELの指定目的としては,安全(防災),環境保全,経済の繁栄,水源確保等が挙げられている。KELの一部は,居住や開墾が禁止されている国立公園地区であり,また,一部は森林保護区として伐採が許可制とされているが,国家戦略区域は,これらよりも広いKEL全域を対象としている。

しかし,アチェ州では,KELの保護に積極的であったイルワンディ(Irwandi)知事が前々回の選挙で敗れて以降,開発重視への政策転換が鮮明化した。イルワンディ前知事は,2007年にBPKE(Badan Pengelolaan Kawasan Ekosistem)と呼ばれるKEL保護庁を設け,200人を超えるレンジャーと20名以上の事務職員がKELの保護にあたっていた。KEL保護庁は開発許可に慎重な立場をとって不許可を主張したり,許可の取消しを求めたりもしてきたが,新知事はKEL保護庁を廃止した。また,土地利用計画を定めるカヌンにおいて,他の4つの国家戦略計画区域については規定したのに対し,KELに関しては全く明記しないまま,KELを通る新たな道路建設案等を計画に盛り込んだ。

アチェ州が提出した土地利用計画案に対し,内務省は,KELを計画に盛り込むべきであるとの判断を示したが,アチェ州議会はこれに従わないままカヌンを採択した。このような場合,本来内務省は計画の取消しを命じる権限を有しているが,実際には,現在に至るまで,取消権を行使していない。アチェ州がパプア州と並び独立性の高い特別州であることが影響しているのではないかともいわれているが,他の分野では,国がアチェ州に対し強硬な姿勢に出ることもあり,その理由は明らかではない。

このような状況に対し,コミュニティの住民たちが,①アチェ州知事やアチェ議会はKELを保護する義務を怠り,②内務大臣はその是正を求める義務を怠っているとして,これら3つの機関に対し,義務の履行を求めた訴訟が本件である。

原告のほかに本訴訟で重要な役割を果たしているのが,Yayasan HAkA(Hutan, Alam dan Lingkungan Aceh: アチェ森林・自然・環境財団)というNGOである。HAkAは,廃止されたKEL保護庁の人たちが中心となって,3年前(2014年)に設立された。HAkAでは,レンジャー(Wildlife Protection Team)を支援しており,レンジャーの管理・運営は,野生動物保護パトロールの専門組織であるFKL (Leuser Conservation Forum)が行っている(http://www.haka.or.id/?page_id=1022)。1つのチームは4~5人のレンジャーで構成され,2016年現在,15チーム(従前のレンジャーのうち約100人)が,KELのうちアチェ州の保護のために引き続きレンジャーとして活動している。KELにおけるレンジャー活動やバンカル島のウミガメ保護活動と同時に,HAkAは,法の執行確保のため訴訟支援も行っている。例えば,プランテーション開発のため意図的に泥炭区域の森林火災を引き起こした会社に対して環境省が訴訟を提起した事件では,HAkAは,NGO連合の一員として,国内外のキャンペーンやアドボカシー活動を主導し,この問題は国際的な注目を集めた。森林破壊中止を求める5万人の請願署名が集まり,この訴訟は最高裁で勝訴が確定している(最判2015年9月16日)(http://www.haka.or.id/?p=2256)。

HAkAの事務局長であり,元レンジャーでもあるイルファン(Badrul Irfan)氏は,「レンジャーのなかには,祖父の代から代々レンジャーを務める者も多く,トラやサイの生息地に関する情報や知識は,密猟者から守るために親から子へと引き継がれてきた。組織の廃止に失望し,この貴重な生息情報を濫用する者が出ないようにするためにも,レンジャー活動を維持し,彼らの生活を支えることが重要だ」と述べる。森だけではなく,KEL内のコミュニティを知り尽くしたイルファン氏が人々を結びつける要となっているようである。

現在,HAkAは,国際NGO,EU諸国をはじめ国内外の支援で運営されている。民間団体となって従来のような密漁や違法伐採の監督権限がないため,現在,HAkAは,KELの中では森林管理を担うアチェ州森林局(Dinas Kehutanan Provinsi Aceh)と協力し,また,国立公園(Gunung Leuser National Park)内ではルーサー国立公園局(BBTNGL: Gunung Leuser National Park Authority Office)と協力して,一緒に定期パトロールをしたり,違法に仕掛けられたワナにかかった動物を保護したり,違反事例を報告する活動をしているという。しかし,森林局は森林保護区においてのみ活動しており,森林保護区はKEL全域をカバーしていない。そのため,本来,それ以外の区域についてもゾーニングを行い,適切な施策をとる必要があるにもかかわらず,そのための州予算が割り当てられていない状況にあるという。そこで,HAKAでは,Directorであるファルハン(Farwiza Farhan)氏が訴訟の原告の一人となるとともに,関係者の調整,ジャカルタ裁判所への交通の手配や資金確保等を担っている。

もう1つ重要な役割を果たしている組織がGeRAMである。GeRAMは,アチェ市民訴訟運動という意味で,市民訴訟を支援するネットワークである。そのコーディネータを務め,HAkAの法務担当でもあるイクサン(Nurul Ikhsan)氏は,もともと人権NGOのスタッフであり,KEL地域の出身でもある。本ヒアリングにおいて,イクサン氏は,①仮にKELにおいて知事が開発許可を出せば違法ではあるが,事後的に許可を争うのでは森林破壊を食い止めることができない可能性が高く,予防的な措置が必要である,②将来国の計画を改定する際に州の土地利用計画を参照するという記述形式になる可能性があるが,そうなるとKELが保護対象から除外されてしまうなどの懸念を語った。実際,森林火災等,KELにおける違法な開発行為は後を絶たず,環境大臣やNGOによる多くの訴訟が提起されており,この地域の開発圧力は高い。

インドネシアでは,環境分野の市民訴訟に関する明文規定はないが,2013年に最高裁が発した環境訴訟ガイダンスは,規定の未整備を理由に裁判を拒否することはできないとし,従来の判例を基礎として市民訴訟の要件を示している。それによれば,市民(事業者を除く個人)は,公共の利益のために,環境法規違反者,被害内容等について国家機関に通報し,60日間政府に対し義務履行の機会を与えたうえで,義務の履行を求める訴訟を提起できるとされている。

インドネシアでは,抽象的規範に関する環境団体訴訟も認められており,土地利用計画にKELが明記されなかったことに対しては,まず,ワルヒ・アチェがカヌンの取消しを求めて最高裁判所に訴えを提起した。環境保護・管理法では,団体訴訟の原告適格の要件として3年の活動実績が求められており,HAkAはこの要件を充たさなかったため,訴訟の支援にまわった。しかし,最高裁判所は,KELはカヌンよりも上位の国法で守られているとし,経済利益や環境利益等,多様な利益の衡量について州の判断を尊重し,請求を退けた。

そこで,KELの保護を求めるNGOやコミュニティは,新たな戦略を迫られることになった。検討の結果として選択されたのが,市民訴訟である。新たな団体訴訟を提起することも検討されたが,環境団体よりもコミュニティや住民が原告である方がマスコミの注目度が高く,また裁判所も市民訴訟を認める傾向にあるため,多様な層の人を原告に立てることになった。アチェの行政は,①州(Provinsi),②県(Districts/Kabupaten),③郡(Sub-districts/Kecamatan),④村(Desa)の4層構造である。訴訟では,KELがあるガヨ・ルエス県(Gayo Lues)の9つの郡から一人ずつ原告を出すこととなった。具体的には,農民二人,レンジャー,川の上流と下流の伝統的なコミュニティのリーダー各1名,教員,伝統音楽のアーティスト,原住民NGO(JKMA)メンバー,環境NGO(HAkA)メンバー(女性)である。予算と交通手段が限られているため,最初は原告を3人に絞る予定であったが,寄付が集まったので,9人まで広げることができた。原告らは,それぞれの地域のコミュニティのキーパーソンであり,何らかの形でKELの保護活動をしてきた人たちであるが,元々知り合いというわけではなかった。しかし,多様ではあるが,共通の目的を持っている者が集まることにより,強固なネットワークが形成され,例えば川の上流部が守られなければ下流部も守られないというキャンペーンを展開するなど,訴訟以外の活動も活発に行っている。相互に離れているため,日常のコミュニケーションはラインやHAkAのフェイスブックを通じてなされることが多いが,一堂に会することもあるという。

インドネシアでは,国の機関と州の機関がともに被告に含まれている場合,何れの所在地で訴訟を提起しても良いとされているが,前述のように,市民訴訟は判例と最高裁の環境訴訟ガイダンスにより認められている新しい訴訟であるため,ジャカルタの裁判所の方が訴訟が受理されやすく,また,ジャカルタの方が社会の注目を集めることができると考えて,遠距離ではあるものの,中央ジャカルタ裁判所に訴訟を提起することとされた。内務大臣に対しては,計画の取消権を行使する義務の不作為が違法であるとして当該義務の履行を求め,州知事と州議会に対しては,計画策定過程において,コミュニティの意見を聴かなければならないのに参加手続を実施しなかったことやKELの災害防止機能を考慮していないことが違法であるなどとし,国の評価結果に従い,KELを計画に位置づける義務を履行するように求める訴訟が提起された。インドネシアには行政裁判所もあるが,行政裁判所が管轄するのは許認可等,具体的な決定のみとされているため,本訴訟は民事訴訟である。

市民訴訟において,原告は,州レベルの土地利用計画がKELの保護に言及していないことにより,森林伐採,鉱業,アブラヤシ・プランテーションの開発が進むおそれがあり,森林伐採は洪水,地滑り,環境汚染等,コミュニティへの影響が大きいと主張した。これに対し,被告は,KELはすでに国の国家戦略地区として保護されており,また,KELの一部は国立公園として厳格に保護されていると反論した。この主張について,原告は,国立公園区域はKELの一部に過ぎず,また,国立公園区域以外のKEL区域は,コミュニティの共有地や住居がある,いわばバッファゾーンであり,コアゾーンである国立公園区域とは異なる特別の施策が必要であると主張した。また,初代環境大臣であるエミール・サリム(Emil Salim)氏や元最高裁判事のマルワラ・シハラハン氏も裁判で同様の意見を述べるとともに,コミュニティは,オランダ植民地時代の1920年代初頭にKELの開発に反対し,これを阻止しており,KELの保護は,伝統的なコミュニティと密接に結びついた長い歴史のあることを指摘した。

しかし,2016年11月30日の判決において,裁判所は,原告の請求を退けた。その理由は,KELはすでに国の国家戦略地区として保護されているため,改めて明記する必要はなく,明記してもしなくても,コミュニティの利益には関わらないということであり,原告は直ちに控訴した。インドネシアでは,環境裁判官制度が取り入れられているが,本件は環境事件に当たらないとして環境裁判官が担当しておらず,この点の判断も含め,控訴審の行方は予断を許さない状況である。また,2017年2月15日の選挙において,再びKEL保護派の前知事が返り咲いた。敗北を喫した知事が選挙結果を不服として憲法裁判所に訴訟を提起したため,前知事の当選は確定していないが,前知事が再び政権を握れば,情勢が大きく変化するのではないかとの期待は高い。

この訴訟を含め,KELの保護については国際社会の関心も高く,EUも,KELを土地利用計画に含めないことは違法であるとのコメントを出している。また,俳優のレオナルド・デカプリオがKELを訪れて計画を批判したことで,幅広い層にこの問題が知られるようになり,保護を求める署名の数が急増した。開発賛成派の中には,NGOは動物保護のために一切の開発をやめさせようとしていると批判する者もいるとのことであるが,HAkAや原告が繰り返し強調していたのは,コミュニティの人々の暮らしを守るためにKELを守る必要があるということである。

イクサン氏によれば,KEL内には,言葉も文化も違う複数のコミュニティが存在するが,共有地の管理方法は比較的似ているという。すなわち,コミュニティには,①Pang Huteun(森林),②Pang Seunebu(畑),③Pang Laut(海),④Keujereun Blang(田)といった分野別のコミュニティ協議会(Counsel Communal)があり,共有地の木をどこでどのように切ることができるのかということや,収穫の一部を寄付すべきことなどを事細かに決めている。また,コミュニティ内の土地には個人の土地と共有地があるが,共有地の中にも村の土地と複数の村の土地というように,いくつかのレベルがある。コミュニティの基本は合議であり,コミュニティ協議会のメンバーは選挙で選ばれるわけではないが,「あの人は森に詳しい」ということを誰もが知っていて,自然に選ばれることになる。海であれば,各コミュニティで最も海に関する知恵のある人がPawang Lautとなり,その中で最も尊敬される人がPang Lautとなるが,ヒエラルキーな組織ではない。また,知恵は親から子に受け継がれることが多いので,Pang Lautの子がPang Lautになることも珍しいが世襲制ではない。しかし,このような伝統的なコミュニティのルールと知恵は不文律であることが多く,近代的な成文法に書かれていないが故に,裁判で軽視されることも少なくない。そこで,最近では,JKMAというアチェの原住民の権利を守るNGOや,アチェ・トラディショナル・カウンシル(MAA)という,原住民の代表からなる政府組織も,慣習法を成文化する努力をしているという。

原告の一人であり,上流のピニン(Pining)郡プルティク(Pertik)村のリーダーの一人であるアマン・ジャルム(Aman Jarum)氏は,アチェ・トラディショナル・カウンシル(MAA)という原住民の代表からなる州政府機関のメンバーでもある。ジャマン氏が環境保護に関わるようになったきっかけは,1968年に,電気ショックを用いて魚を捕獲していた公務員に抗議して,これをやめさせたことであった。伝統的な慣習法に反する違法な漁業の禁止は,その後,村長のデクレ(命令)として成文化された。ジャルム氏は,川の決壊を防ぐために川岸に竹を植えたり,水源である森の植林活動を進めたりしてきたほか,音楽家でもあることを活かして,環境保護のためのコンサートを企画し,今までの活動を次の世代に引き継ぐため若い人たちのグループを組織するなど,法律による規制とは異なる方法で住民の意識啓発を行ってきた。そのジャルム氏が訴訟の原告になろうと決意したのは,住民には何の説明もなく,意見を聴かれることもないままにカヌンが制定されてしまったためである。行政も立法もKELを守ろうとしないから,残る司法に訴えるほかないと考えたという。

ジャルム氏は,KELは自分たちのアイデンティティであると言う。村の共有地は,①水牛用の牧草地であるBlang Pelueuren,②水源地であるAh Aut nen,③水田用のBlang Penye,④森林であるNureun Bur Prutemenに分けられる。村の各住居にはトイレがなく,川は食事,洗濯を含むすべての生活用水の唯一の水源である。また,森林の木は,住居を作るなど自分たちの生活のためにだけ切ることができるが,どの木をどれくらい切っても良いのかは,村長が決めるのではなく,みんなで話し合い,その結果を村長がレターにするという形である。コミュニティの伝統的な社会は,①Saudere,②Vrang tue,③Pegawe,④Penghuluから成り立つ。①はフォーラムで話し合いみんなで合意に達するという意味である。②は高齢者,③は宗教リーダー,④は村長の意見を聴くということである。

このようにKELの利用は合議により,村人との生活に必要な限りで認められてきたのであり,国立公園が厳格に保護されているとしても,その周辺地域が保護されなければ,やがては国立公園区域も破壊されてしまう。実際,カヌンができた後,外部の投資家による鉱業開発計画が村に持ち上がった。そこで,ジャムル氏は,村人と「このコミュニティは,世界の終わりまで鉱業開発に反対する」という横断幕を村の入口に掲げ,コンサートを開いてトラの歌を歌ったり,森林保護フォーラムで演説したりもした。その広報を支えているのは,村の若者たちである。

森のことは知り尽くしており,KELの中では年齢を感じさせないジャムル氏であるが,裁判所のあるジャカルタは遠い。ADRと裁判のため今まで5回行ったが,ジャカルタに行くと具合が悪くなってしまうという。第1審は敗訴であったが,ジャムル氏は,結果は気にしないという。自然の循環はつながっているが,裁判所はそれを理解していない。KELが土地利用計画に入っていても入っていないとしてもコミュニティには関係ないというのが裁判所の判断であるが,裁判所は現在の損害しか考えておらず,地域の知恵を尊重したり,長期的な視野を持つという観点がないから,自分たちとはコミュニティの考え方が違っている。しかし,自分は,将来世代からなぜKELを守らなかったのかと言われないよう自分の義務として裁判をしているのだと言う。

もう一人の原告である農民のジュアルシャ(Juarsyah)氏は,コーヒーを育てている。農民団体の一員であるとともに,自然愛好団体でも活動してきた。郡の人たち10人くらいで新たに環境保護のグループを作り,大規模プランテーションに代わるオルタナティブなプログラムを検討している。今の重点はエコツーリズムである。ジュアルシャ氏のインタビューを行ったカフェは,農民グループのコーヒー農園の中にあり,オーナーのサディキン(Sadikin)氏もコアメンバーの一人である。単に豆を売るだけではなく,焙煎して付加価値をつけたり,地元にカフェを開くことで,生活の糧を得る新たな可能性を示すことができる。また,若い人たちが集まって環境について話せるベースキャンプを作りたいと思ったからであるという。農園で飲むコーヒーは,アチェ市内で飲んだコーヒーよりもおいしいと感じる。

ジュアルシャ氏が訴訟に参加したのは,第1に,コーヒーがKELの自然と密接な関わりを持っているからである。コーヒーの質は気温と土壌に左右され,森の存在がこれらを左右する。第2に,森の木を切れば,森の中のウイルスや病気がコミュニティに広がるおそれがある。実際,昔はほとんどなかったデング熱などが,最近発生しているのは,森林開発のせいではないかと思うからである。ジュアルシャ氏も,裁判の勝ち負けには,あまりこだわっていない。裁判は人々の注目を集めてこの問題を広く知ってもらうための手段であるという。

HAkAの人たちは「大規模プランテーションや鉱業開発を掲げる外部の投資家は暮らしが豊かになると言うが,具体的な数値で語ることはなく,夢物語ばかりである。森林破壊により,果物・野菜,川魚等の恵みは失われ,安い賃金で働く労働者になり,食べ物も買わなければならなくなった。重要なのは,持続可能な形でコミュニティを維持できるようなオルタナティブを実現することだ」と語る。本市民訴訟は,外部の投資家が近代的な法制度を振りかざして持ち込む巨大プロジェクトに対抗できるように,伝統的な共有地の地域に根ざした利用ルールを再構成する挑戦的訴訟であるといえる。

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