条例

八潮市自治基本条例

自治体データ

自治体名 八潮市 自治体コード 11234
都道府県名 埼玉県 都道府県コード 00011
人口(2015年国勢調査) 93,363人

条例データ

条例本文

○八潮市自治基本条例
平成22年12月17日
条例第23号

目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 自治の基本理念と基本原則(第4条―第8条)
第3章 まちづくりの基本原則(第9条―第12条)
第4章 市民(第13条―第15条)
第5章 市議会(第16条・第17条)
第6章 行政(第18条―第20条)
第7章 行政運営の原則(第21条―第26条)
第8章 住民投票(第27条・第28条)
第9章 条例の検証及び見直し(第29条)

附則
私たちのまち八潮は、1500年にわたる悠久の歴史を刻んできた。
市域からは、古墳時代の土器片や平安時代の竪杵たてぎねが出土し、当時の人々の生活の痕跡をうかがうことができる。
また、河川に囲まれた八潮は、古くから川舟を使った水運が盛んで、室町時代の八條は、定期的に市が立つ交易の中心として栄えていた。
江戸時代の市域は、八條領に属し、八條村は越谷市や草加市の一部を含む35か村の社会、経済の中心であった。八潮の市域は20か村に分かれ、北部は幕府領、南部は旗本領として、江戸の重要な穀倉地帯として栄えてきた。
明治の大合併、その後の昭和の大合併において、八條、潮止、八幡の3村が1つとなり、八潮村として現在の市域の姿が形づくられるとともに、歴史と文化を受け継いできた。
その後、農業が産業の中心であった八潮は、昭和35年の工場誘致条例の施行、昭和40年代の草加・八潮工業団地の開発などにより、多くの工場などが集積し、県内有数の工業都市へと発展してきた。一方、土地区画整理事業の進展により住宅都市としても発展を続け、さらに、平成17年のつくばエクスプレスの開通により、新たなまちへと変貌を遂げつつある。
また、八潮の歴史は、利水と治水の歴史でもあった。
私たちのまち八潮は、市域を囲むように流れる中川や綾瀬川などの河川、市域の中央を南北に流れる葛西用水、八條用水の恵みを受け、水と生活、文化が密接に関わりあって、発展してきた。
河川や用水がもたらす豊かな水は、様々な産業を育んできた。特に、浴衣の生地を染め上げる長板中型は、江戸時代からの古い歴史を有し、明治以降には形付屋や紺屋を専業とする家が多く見られた。この伝統工芸技術は現在へと引き継がれ、染色産業は八潮を代表する地場産業となっている。
一方、先人たちは自然災害に挑み、克服してきた。
江戸時代、綾瀬川は幕府により治水のための改修が進められ、柳之宮村から西袋村にかけて西へ折れ曲がっていたが、南北に直進され、さらに八條用水や葛西用水が造られ、豊かな耕作地へと生まれ変わった。また、現在の八潮市と三郷市境を流れていた中川は、大正時代の治水対策により、潮止村の大瀬、垳、古新田の3地区内を直進する改修が行われた。
これらの改修により、柳之宮村、西袋村は綾瀬川の両側に分かれることになり、また潮止村の大瀬、垳、古新田の3地区は中川の両側に分かれ、現在私たちが見る地形が形成された。
長い歴史が造り上げてきた八潮の地形は、水辺の織り成す景観に富み、現在も市民に親しまれている。
私たちは、今日の八潮が先人たちの長年の努力によって築かれ、形づくられたことを決して忘れてはならない。それは八潮の今日を語る上で、また未来を語る上で八潮の礎となるものである。
時あたかも、地方分権の進展により、地方公共団体には自主・自立の自治運営が求められている。そのために、私たち市民、市議会、行政は、日本国憲法で保障された地方自治の本旨に基づき、それぞれの役割を果たしながら互いに協働していくことで、魅力的なまちづくりを推進していかなければならない。
私たちは、先人たちのまちづくりに懸けた思いを胸に、豊かな自然を守り育てながら、活気ある都市として発展させていくため、安全・安心を確保し、さらに市民が互いにふれあい、喜びを分かち合える豊かな地域社会の実現を目指すものである。
私たちは、私たちのまち八潮に愛着と、八潮市民としての誇りを持ち、主体的にまちづくりに参画することを自治の基本理念とし、ここに自治の最高規範として八潮市自治基本条例を制定する。

第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市における自治の原理原則を定め、市民の権利及び責務並びに市議会及び行政の責務を明らかにするとともに、それぞれが協働し、自治を実現することを目的とする。
(最高規範)
第2条 この条例は、本市における自治に関する最高規範であり、他の条例、規則等の制定又は改廃に当たっては、この条例の定める事項を遵守し、これに適合させなければならない。
(定義)
第3条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 市民 市内に住む者又は市内で働く者、学ぶ者若しくは事業その他の活動を行う個人若しくは団体をいう。
(2) 行政 市長及び行政委員会(教育委員会、選挙管理委員会、公平委員会、監査委員、農業委員会及び固定資産評価審査委員会をいう。以下同じ。)をいう。
(3) 参画 政策の立案、実施及び評価の各段階において、主体的に関与することをいう。
(4) 協働 市民、市議会及び行政がそれぞれの役割及び責務を自覚し、自主性を尊重しつつ、対等な立場で、相互に補完し、協力することをいう。
第2章 自治の基本理念と基本原則
(自治の基本理念)
第4条 市民は、自治の主体者として、市議会及び行政とともにまちづくりを推進するものとする。
(参画の原則)
第5条 行政は、市民に対して参画の機会を保障することを原則とする。
(協働の原則)
第6条 市民、市議会及び行政は、協働を基本としたまちづくりを原則とする。
(情報共有の原則)
第7条 市民、市議会及び行政は、市政に関する情報(以下単に「情報」という。)を共有することを原則とする。
(情報公開の原則)
第8条 市議会及び行政は、市民に対して情報を迅速かつ適切に公開することを原則とする。
第3章 まちづくりの基本原則
(子ども)
第9条 子どもは、未来の担い手として尊重されなければならない。
2 家庭、学校及び地域並びに市民、市議会、行政その他関係機関は、連携を図りながら協力し、子どもの健全な育成に努めるものとする。
(安全・安心)
第10条 市長は、市民が安全で安心して生活を営み、又は活動を行うことができるよう必要な体制及び設備を整備しなければならない。
(危機管理)
第11条 市長は、災害その他の市民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態に対し、迅速に対応することができるよう体制の整備を図るとともに、総合的かつ長期的な対策を講じなければならない。
(地球環境)
第12条 市民、市議会及び行政は、地球環境の保全及び改善が緊急の課題であることを認識し、人と自然とが共生できる持続可能な循環型社会の構築を目指し、積極的にこれを推進しなければならない。
第4章 市民
(市民の権利)
第13条 市民(団体を除く。)は、個人として尊重され、良好な環境の中で安全で安心して生活を営む権利を有する。
2 市民は、自治の主体者として、参画の権利を有する。
3 市民は、市議会及び行政の有する情報について、知る権利及び必要な説明を受ける権利を有する。
4 市民は、行政サービスを受ける権利を有する。
(市民の責務)
第14条 市民は、自治の主体者であることを自覚し、まちづくりに積極的に協力し、自治の推進に努めなければならない。
2 市民は、参画に当たっては、互いの立場や意見を尊重し、自らの発言と行動に責任を持たなければならない。
3 市民は、行政サービスに伴う負担を分任しなければならない。
(地域コミュニティ)
第15条 市民は、地域コミュニティ(町会、自治会その他のまちづくりに貢献する活動を行う団体をいう。以下同じ。)が自治の担い手であることを認識するとともに、これに参加し、協力するものとする。
2 市議会及び行政は、地域コミュニティを自治の担い手として位置付け、自主性及び自立性を尊重しつつ、その活動を支援するものとする。
第5章 市議会
(市議会の役割と責務)
第16条 市議会は、自治の基本理念にのっとり、市民の福祉の向上とまちづくりのために議会の権限を行使し、自治を推進しなければならない。
2 市議会は、市民に対し公正で透明性の高い開かれた議会運営に努めなければならない。
(議員の責務)
第17条 議員は、市が直面する諸問題及び中長期的な課題を把握し、その解決のため、公正かつ誠実に活動しなければならない。
2 議員は、市民の意見を適正に市政に反映させるよう努めなければならない。
第6章 行政
(市長の責務)
第18条 市長は、市民の信託にこたえ、自治の基本理念にのっとり、公正かつ誠実に市政を執行し、自治を推進しなければならない。
2 市長は、効率的かつ効果的な行政運営に努めなければならない。
(行政委員会の責務)
第19条 行政委員会は、その権限と責任において公平かつ公正に職務を遂行しなければならない。
2 行政委員会は、効率的かつ効果的な事務の執行に努めなければならない。
(市の職員の責務等)
第20条 市の職員は、自治の基本理念にのっとり、公正かつ誠実に職務を遂行しなければならない。
2 市の職員は、職務に必要な知識、技能等の向上に努め、創意工夫をもって職務を遂行しなければならない。
3 職員の任命権者は、それぞれの職員の人材育成を図るとともに適正に指揮監督しなければならない。
第7章 行政運営の原則
(総合計画)
第21条 市は、自治の基本理念にのっとり、総合計画(総合的かつ計画的な行政運営を図るための最上位計画をいう。以下同じ。)を策定しなければならない。
2 市長は、総合計画の進捗状況を市民に分かりやすく公表しなければならない。
(財政)
第22条 市長は、総合計画を踏まえ、中長期的に財政を見通し、計画的で健全な財政運営に努めなければならない。
2 行政は、市が保有する財産を適正に管理し、効率的かつ効果的な運用に努めなければならない。
3 市長は、財政状況及び財産の保有状況を市民に分かりやすく公表しなければならない。
(組織)
第23条 行政の組織は、市民にとって分かりやすく利用しやすいものでなければならない。
2 行政の組織は、社会経済情勢の変化並びに行政需要及び政策課題の変化に対応するため、必要に応じて見直すものとする。
(意見公募)
第24条 行政は、重要な政策の決定又は変更に当たっては、当該政策の案をあらかじめ公表し、市民の意見を求めるものとする。
2 行政は、市民の意見を求めた場合は、提出された意見を十分に考慮するとともに、その結果及び理由を公表しなければならない。
(行政評価)
第25条 行政は、効率的かつ効果的な行政運営を図るため、市政全般にわたり行政内部及び外部による評価を行わなければならない。
2 市長は、評価の結果を市民に分かりやすく公表するとともに、市政に反映するよう努めなければならない。
(他の機関との連携協力)
第26条 行政は、国、他の地方公共団体その他関係機関と連携を図りながら協力し、共通する課題に取り組まなければならない。
第8章 住民投票
(住民投票)
第27条 市長は、市政に係る重要な事項について、住民の意思を反映するため住民投票を実施することができる。
2 市民、市議会及び市長は、住民投票の結果を尊重しなければならない。
(請求等)
第28条 本市の議会の議員及び市長の選挙権を有する者は、その総数の4分の1以上の者の連署をもって、その代表者から市長に対して住民投票の実施を請求することができる。
2 市議会は、住民投票の実施を議題とし、これを議決したときは、市長に対してその実施を請求することができる。
3 市長は、前2項の規定による請求があったときは、住民投票を実施しなければならない。
4 前項に規定するもののほか、市長は、自ら住民投票を実施することができる。
5 住民投票について必要な事項は、別に条例で定める。
第9章 条例の検証及び見直し
第29条 市長は、この条例の施行の日から4年を超えない期間ごとに、この条例の各条項が社会情勢に適合したものかどうかを検証しなければならない。
2 市長は、前項の規定による検証に当たっては、市民を中心とした委員会を設置し、広く市民の意見を聴かなければならない。
3 市長は、検証の結果を踏まえ、必要な措置を講じなければならない。

附 則
この条例は、平成23年7月1日から施行する。