条例

新潟市自治基本条例

自治体データ

自治体名 新潟市 自治体コード 15100
都道府県名 新潟県 都道府県コード 00015
人口(2015年国勢調査) 789,275人

条例データ

条例本文

新潟市自治基本条例

平成20年2月22日
条例第1号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第5条)

第2章 各主体の責務等

第1節 市民(第6条・第7条)

第2節 議会(第8条―第10条)

第3節 市長等(第11条・第12条)

第3章 市政運営

第1節 市政運営の基本原則(第13条・第14条)

第2節 参画及び協働の仕組み(第15条―第19条)

第3節 信頼性,公正性及び効率性の確保の仕組み(第20条―第24条)

第4章 区における市民自治

第1節 区における行政運営(第25条)

第2節 地域における協働の推進(第26条―第28条)

第5章 国及び他の地方公共団体等との協力(第29条)

附則

信濃,阿賀野の流れが日本海に注ぎ,ゆったりと広がる田園や里山,水辺に水鳥たちが舞い,夕日の美しいまち,新潟。

恵まれた自然や環境に加え,高い拠点性と都市機能を併せ持ち,世界に開かれた開港五港の一つ,新潟。これが,私たちの暮らしているまち。

私たちは,先人たちが編んだ歴史に大きな誇りを感じています。この地では農民自らが開田を主導し,みなとでは町人自らがまちを経営してきました。

自主と自治の精神から多様な文化と風土が育はぐくまれ,個性的な地域の発展を成し遂げてきました。これが,私たちの築いてきたまち,新潟。

私たちは,今,本州日本海側で初の政令指定都市新潟を船出させました。田園とみなとまちが恵み合い,世界の人々と英知が集まる交流都市を目指して,私たちの航海は,たゆみなく続きます。

私たちは,世界との交流を深め,互いの価値を認め合いながら,多様な文化と知恵を導き入れ,地域と世界にとって有為の人材を育てます。日本海の平和に貢献し,一人ひとりの人権が大切にされる,新潟。これが,私たちの目指しているまち。

私たちは,先人から受け継いだ自主と自立の精神風土をいかし,新潟の地から地域主権の流れを大きくして,国,県と相互協力の関係を築きます。その土台の上で,地域の歴史と文化をいかした,個性的な,真に自立度の高いまちづくりを進めます。これが,私たちの誇りとなるまち,新潟。

私たちは,地域のことは自らが考え,自らが行動するという,分権型の政令指定都市をつくります。そこでは,市民が主体的にまちづくりに参画し,共助と協働の輪を広げて,安心して暮らせる社会,持続可能な市民自治の仕組みを自らの力でつくり上げていきます。これが,私たちのつくり出すまち,新潟。

かつてないまちをつくるため,私たちは,培われてきた地域の絆きずなを大切にし,市全体の一体感を保ちながら,地域の独自性や地域コミュニティの自立性を尊重した自治を推進し,それぞれの役割を果たします。

このような考えの下,市民自治の基本となる条例として,ここに新潟市自治基本条例を制定します。私たちの愛するまち,新潟を,未来へとつなげていくために。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は,本市における自治の基本理念及び基本原則を示すとともに,市民の権利及び責務並びに市議会(以下「議会」といいます。)及び市長等の役割及び責務を明らかにし,市政運営の諸原則を定めることにより市民自治の確立を図ることを目的とします。

(定義)

第2条 この条例において次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによります。

(1) 市民 次に掲げるものをいいます。

ア 市内に住所を有する者

イ 市内で働き,又は学ぶ者並びに市内において事業活動その他の活動を行う者及び団体

(2) 市長等 市長その他の執行機関及び公営企業管理者をいいます。

(3) 市 議会及び市長等をいいます。

(4) 参画 政策,施策等の企画立案の段階から市政に主体的にかかわり,行動することをいいます。

(5) 協働 市民と市が対等な関係で相互の立場及び特性を理解し,目的を共有し,並びに連携し,及び協力することをいいます。

(条例の位置付け)

第3条 この条例は,本市の自治の基本を定めるものであり,市は,他の条例,規則及び規程(以下「条例等」といいます。)を制定し,改正し,又は廃止しようとする場合は,この条例の趣旨を最大限尊重してこの条例との整合を図らなければなりません。

(自治の基本理念)

第4条 市民及び市は,次に掲げる基本理念により市民自治の確立を目指すものとします。

(1) 個人の尊厳及び自由が尊重され,かつ,公正で開かれた市民主体の市政を推進すること。

(2) 地域の特性及び独自性を尊重した地域自治を推進すること。

(自治の基本原則)

第5条 市民及び市は,それぞれの果たすべき役割及び責任を担い,自らを律し,並びに自主的かつ自立的に行動するとともに,次に掲げる基本原則により自治運営を行うものとします。

(1) 市政に関する情報を共有すること。

(2) 市民の参画の下で市政の運営を行うこと。

(3) 協働して公共的課題の解決に当たること。

第2章 各主体の責務等

第1節 市民

(市民の権利及び責務)

第6条 市民は,市民自治の担い手として,市政に関する情報を知る権利を有するとともに,政策の形成,執行及び評価の過程に参画することができます。

2 市民は,自らの責任及び役割に基づき公共の福祉に反することなく,かつ,次世代への影響に配慮して自主的な活動を行うとともに,その意思に基づき参画を通して市民自治の確立に取り組むものとします。

3 市民は,参画及び協働に当たっては,総合的な見地から発言及び行動をし,かつ,それらに対し責任を持たなければなりません。

(法人等の社会的責任)

第7条 市内で事業活動を行う法人その他の団体は,地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し,及び地域社会との調和を図ることにより,暮らしやすい地域社会の実現に寄与するよう努めるものとします。

第2節 議会

(議会の役割及び責務)

第8条 議会は,本市の意思を決定する機関としての責任を自覚するとともに,執行機関を監視する機関としてその役割を果たし,並びに市勢の進展及び市民自治の推進に努めるものとします。

2 議会は,市民の意思を的確に把握して政策の形成に反映させなければなりません。

3 議会は,政策形成機能の充実を図るため,積極的に調査研究を行うとともに,市民,専門家等の知見をいかすよう努めなければなりません。

(市民に開かれた議会)

第9条 議会は,議会活動について市民に対する説明責任を果たすため,特別な理由のない限り,会議を公開し,議会の保有する情報の共有化を図る等開かれた議会運営を行わなければなりません。

(議員の役割及び責務)

第10条 議会の議員(以下「議員」といいます。)は,市民の負託に応え,議会が第8条に規定する役割及び責務を果たすため,自らの役割を深く自覚し,政治倫理の確立に努めるとともに,公正かつ誠実に職務を遂行しなければなりません。

2 議員は,市民の多様な意見及び要望を集約し,総合的な見地で市政に反映させることを行動の指針としなければなりません。

3 議員は,議会における審議及び政策立案活動の充実を図るため,調査,研究等の活動を通じ,不断の研鑽さんに努めなければなりません。

4 議員は,市民に開かれた議会運営の実現に寄与するための活動を行うよう努めなければなりません。

第3節 市長等

(市長の役割及び責務等)

第11条 市長は,市民の負託に応え,市民福祉の増進を図るため,市民自治を推進するとともに,公正かつ誠実に市政を運営しなければなりません。

2 市長は,地域の資源を最大限に活用して,必要な財源の確保を図るとともに,最少の経費で最大の効果を挙げる市政を運営しなければなりません。

3 市長等は,その権限に属する事務を自らの判断及び責任において公正かつ誠実に執行するとともに,相互の連携を図ることにより一体として行政機能を発揮しなければなりません。

4 市長等は,公平かつ効率的で質の高い行政サービスの提供を図ることにより市民満足度の向上に努めなければなりません。

(職員の責務)

第12条 市長等の補助機関である職員及び議会の事務局の職員(以下これらを「職員」といいます。)は,公正かつ誠実に職務を遂行し,及び市民とともに市民自治を推進しなければなりません。

2 職員は,法律,法律に基づく命令(告示を含む。)及び条例等(以下「法令等」といいます。)を遵守するとともに,違法又は不当な事実がある場合は,これを放置し,又は隠すことなく適正に対応しなければなりません。

3 職員は,職務に関し不断の研鑽さんに努めるとともに,施策及び事業の実施に当たっては,最大の効果を挙げることができるよう創意をもって職務の遂行に当たらなければなりません。

第3章 市政運営

第1節 市政運営の基本原則

(市政運営)

第13条 市は,健全で持続可能な市政を実現し,もって市民福祉の増進を図るため,次に掲げる事項を基本として市政運営を行わなければなりません。

(1) 市民が広く参画のできる機会の確保に努めることにより市民の意思を市政に反映させること。

(2) 市民の自主的な活動を尊重するとともに,施策及び事業の実施に当たっては,協働を図ること。

(3) 市民に信頼される市政運営を進め,公正性の確保及び透明性の向上を図ることにより市民の権利利益の保護を図ること。

(4) 施策及び事業の実施に当たっては,効率的かつ効果的に行うとともに,その立案,実施及び評価の各段階において市民に分かりやすく説明すること。

2 市は,個性豊かで持続可能な地域社会を実現するため,地域資源を最大限に活用し,及び本市の将来像を示す計画を策定して施策展開を図らなければなりません。

3 市は,組織について,社会経済情勢の変化及び多様化する地域課題に迅速かつ的確に対応するため,不断の見直しを行うとともに,簡素で効率的なものにしなければなりません。

(財政運営)

第14条 市長は,効率的かつ重点的に行政運営を行い,行財政改革に取り組むことにより財政の健全な運営に努めなければなりません。

2 市長は,行政サービスを受ける市民の負担の適正化及び社会資本整備における世代間の負担の公平化が図られるよう適切な財政政策を進めなければなりません。

3 市長は,予算,決算その他の財政に関する事項を公表するとともに,市民に分かりやすく説明しなければなりません。

第2節 参画及び協働の仕組み

(情報の公開等)

第15条 市は,次に掲げる事項に関し,新潟市情報公開条例(昭和61年新潟市条例第43号)に定めるところにより市民の知る権利を保障するとともに,市民との情報共有の効果的な推進を図らなければなりません。

(1) 市が保有する公文書の公開に関すること。

(2) 政策形成過程の情報の提供に関すること。

(3) 地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定により設置する附属機関及び市長等が設置するこれに準ずる機関(以下「附属機関等」といいます。)の会議の公開に関すること。

(4) 本市の出資法人及び指定管理者に係る情報の公開に関すること。

(附属機関等の委員の公募)

第16条 市長等は,附属機関等の委員を可能な限り市民からの公募により選任するものとします。

(市民意見の提出)

第17条 市長等は,新潟市市民意見提出手続条例(平成19年新潟市条例第71号)に定めるところにより政策形成過程における公正性の確保及び透明性の向上を図るとともに,市民の参画を促進するため,重要な政策の企画,立案等に当たっては,事前に内容その他必要な情報を市民に公表して市民の意見を求めなければなりません。

2 市長等は,市民から提出された意見を十分考慮して意思決定を行うとともに,その意見に対する考え方を公表しなければなりません。

(住民投票)

第18条 市長は,市政に関し特に重要な事案について,広く市民の意思を把握するため,事案ごとに条例で定めるところにより住民投票を実施することができます。

2 議会及び市長は,住民投票の結果を尊重するものとします。

(協働の推進)

第19条 市は,協働を推進するための仕組みを整備するものとします。

2 市は,協働を推進するため,必要な情報の収集及び提供,交流の支援,相談並びに研修を行う場及び機会の確保に努めるものとします。

3 市は,協働の推進に当たっては,市民の自発的な活動を支援するよう努めるものとします。この場合において,市の支援は,市民の自主性及び自立性を損なうものであってはなりません。

第3節 信頼性,公正性及び効率性の確保の仕組み

(法令遵守及び倫理の保持)

第20条 市長等は,新潟市における法令遵守の推進等に関する条例(平成17年新潟市条例第73号)に定めるところにより職員の職務に係る法令等の遵守及び倫理の保持のための体制整備を図り,公正な職務の遂行を確保することで,市民の負託にこたえ,信頼される市政を確立し,もって市民の利益を保護しなければなりません。

(適正な行政手続の確保)

第21条 市長等は,市民の権利利益の保護に資するため,新潟市行政手続条例(平成9年新潟市条例第2号)その他の適正な行政手続の確保の仕組みを整備して,処分,行政指導,届出等の手続の適正化を図ることにより行政運営における公正性の確保及び透明性の向上を推進しなければなりません。

(市民の権利利益の保護)

第22条 市は,市民の権利利益の保護を図るため,市政に関する市民からの相談,意見,要望,苦情等に対して迅速かつ誠実に対応しなければなりません。

2 市は,新潟市個人情報保護条例(平成13年新潟市条例第4号)に定めるところに従い,個人情報を適正に取り扱うことにより,個人の権利利益を保護しなければなりません。

3 市長等は,市政の運営について,公正かつ中立的な立場から監視等を行う第三者機関その他の不利益救済の仕組みを整備するものとします。

(行政評価等)

第23条 市長等は,市政運営を効率的かつ効果的に行うとともに,市政の透明性を高め,及び市民への説明責任を果たすため,市民の視点で行政評価を実施するものとします。

2 市長等は,行政評価の結果を市民に公表するとともに,施策,事業等に反映するよう努めなければなりません。

3 市長は,外郭団体(新潟市土地開発公社及び本市が資本金,基本金その他これらに準ずるものの4分の1以上を出資している法人をいいます。以下同じです。)の円滑な運営及びこれに関連する市長等の事務事業の適正な執行を図るため,関与の妥当性,外郭団体の経営状況等を評価し,必要に応じて指導又は改善要請を行わなければなりません。

(外部監査)

第24条 市長等は,適正で,効率的かつ効果的な行政運営を確保するため,監査委員による監査のほか,新潟市外部監査契約に基づく監査に関する条例(平成11年新潟市条例第1号)に定めるところにより外部監査を実施しなければなりません。

第4章 区における市民自治

第1節 区における行政運営

第25条 市長は,地域における特色あるまちづくりを推進するため,市民の参画の下で,区における総合的な計画を策定して実施しなければなりません。

2 区役所(新潟市区役所組織規則(平成19年新潟市規則第68号)第1条に規定する区役所をいいます。以下同じです。)は,市民に身近な行政サービスを提供し,及び自立した地域社会を築くため,次に掲げる役割を担うものとします。

(1) 地域のまちづくりの拠点として,地域の課題を発見して迅速かつ的確な解決を図ること。

(2) 協働の拠点として,自主的かつ自立的な地域活動及び非営利活動を支援すること。

(3) 市民に必要な行政サービスを効果的,効率的かつ総合的に提供すること。

3 市長は,分権型の政令指定都市を実現するために区役所がその役割を発揮できるよう,組織,予算等について必要な体制を整備するものとします。

第2節 地域における協働の推進

(地域住民及び地域コミュニティの役割)

第26条 地域住民(一定の区域内に住所を有する者,その区域内で働き,又は学ぶ者並びにその区域内において事業活動その他の活動を行う者及び団体をいいます。)は,自らが地域の自治の担い手であることを認識してこれを守り育てるよう努めるものとします。

2 地域住民は,地域コミュニティ(地域における多様なつながりを基礎とした団体及び集団をいいます。以下同じです。)が地域課題の解決又は地域住民の相互の連携を図る活動を行う場合は,自らその活動に参加し,又は協力するよう努めるものとします。

3 地域コミュニティは,自らの行動に責任を持って自主的かつ自立的な活動を行うものとします。

(市の役割)

第27条 市は,地域コミュニティの公益的役割を認識してその活動を尊重しなければなりません。

2 市は,地域コミュニティが協働により地域における新たな公益的役割を担う活動を行う場合は,公共性,公平性及び必要性を総合的に判断してその活動に対して支援を行うものとします。この場合において,市の支援は,地域コミュニティの自主性及び自立性を損なうものであってはなりません。

(区自治協議会の役割)

第28条 区自治協議会(新潟市区自治協議会条例(平成18年新潟市条例第74号)第1条第1項の区自治協議会をいいます。)は,同条例に定めるところにより地域の多様な意見を調整し,その取りまとめを行い,協働の要となるよう努めるものとします。

第5章 国及び他の地方公共団体等との協力

第29条 市は,国及び県と対等な立場で相互に協力して市民自治の確立に努めなければなりません。

2 市は,他の地方公共団体と相互に共通する課題に対しては,当該地方公共団体と積極的に連携し,及び協力してその解決に努めなければなりません。

3 市は,国際社会に果たすべき役割を認識して広く国際社会との交流及び連携に努めなければなりません。

附 則 抄

(施行期日)

1 この条例は,公布の日から施行します。

(見直し)

2 市長は,この条例の実効性を高めるため,この条例の施行後5年以内に,検討委員会を設置し,必要な見直しを行うものとします。