協議会制度

効果的な協働のためには,多者協議・熟議に適した協議の場を設定し,どのような組織,手続を定めるかがポイントとなる。「協議」とは,上下の関係にない機関,主体相互の意思の調整・合議をいい,協議会は,行政とさまざまな主体が協働するインターミディアリーな組織としての可能性を有している。

これまでも複数の行政機関から成る法定協議会や非公式のインターミディアリーな協議会は数多く存在していたが,近年,市民,NPO,行政,事業者,学識経験者等,多元的な主体から成る協議会を法定する例が現れている。この種の「多元的な法定協議会」は,行政担当者が,協議会の構成員として,NPO,事業者等と同じテーブルにつくという点や,施策の立案から実施に至るまで継続的に関与するという点が行政の付属機関である審議会との大きな違いである。また,実際には行政が組織するのが通例としても,制度上は,必ずしもNPO等が組織することも排除されていない。最近では,多種多様な性格の協議会が設けられるようになっており,これらを一律に論じることは難しくなりつつある。

ここでは,すべての法定協議会を協議会法律リストとしてリスト化するとともに,協働の一手法としての「多元的な法定協議会」を「新型」として表示する。この種の新型の協議会にも,次のようなさまざまな類型が存在する。

1 民間の自主的活動の促進を図ることを目的とする協議会

例)地球温暖化対策地域協議会(地球温暖化26条)

協議会を公的に位置付けることにより,様々な主体の自主的取組みの連携・促進を図ることが意図されている。そのために,行政主体のみならず,事業者,NPO等が広くこれを組織できることとされている。協議の対象は自らの「日常生活における対策」であり,協議会構成員による協議結果の尊重義務は定められているものの,それ以外に何らかの法的権限を有するわけではない。

2 従来の審議会的機能と施策の実施機能を併せ持つ協議会

例)地球温暖化対策実行計画協議会(地球温暖化20条の4)

各自治体の温暖化対策実行計画の策定協議,実施に係る連絡調整を行うため,当該自治体,推進員,推進センター,住民,学識経験者等から構成される協議会である。従来の審議会は,基本的に諮問に対し答申する機能しか有していないのに対し,この協議会は,計画内容の作成と実施の双方に主体的に関わることが意図されている点が新しい。

例)エコツーリズム推進協議会(エコツーリズム5条以下)

2007年のエコツーリズム推進法では,市町村が組織した協議会がエコツーリズム推進全体構想を作成し,市町村の申請に基づき主務大臣が当該構想を認定した場合に限って,特定自然観光区域の利用・立入規制が可能とされている。協議会と一定の規制とが部分的に連動する仕組みは,新たなローカル・ルールの形成手法として注目される。

3 公共事業の計画・実施のための協議

例)自然再生協議会(自然再生8条以下)

行政が計画を作成して実施する従来型の公共事業に代えて,継続的な組織を設置し,協議による合意型の公共事業を目指すという点が新しいが,協議会方式を採るか否かは,実施者の判断に委ねられている。特定非営利活動法人,学識経験者,土地所有者,関係地方公共団体,関係行政機関等,具体的に構成員のカテゴリーを法律に掲げて,多元的な組織構成を採るべき旨を明示し,運用上,構成員の公募や情報公開も行われているが,構成員以外の意見を反映するための規定や協議が調わない場合の取扱いに関する規定はない。

条文上,事業の実施者は行政に限定されているわけではなく,その意味では提案制度と同様に,NPOや事業者のイニシアティブを認めた制度であるとの見方も可能である。ただし,関係行政機関等には協議会への参加が義務付けられているわけではなく,特に当該事業に許認可を必要とするような場合には,許認可庁や利害関係人の参加なしに協議会を組織し,計画を策定・実施することは事実上困難であろう。

4 公共サービスの提供に関する協議会

例)ボランティア有償運送に関する運営協議会
(道路運送79条の4,道運則51条の7以下)

道路運送法では,地域の合意がある場合に限り,NPOによるボランティア有償運送が可能とされている。地域の合意がある場合とは,市町村長等が組織する運営協議会の協議が調っているときを意味し,運営協議会は,地方公共団体の長,住民・旅客,地方運輸局長のほか,既存の事業者団体やその運転手の団体で構成することとされている。そのため,仮に既存の事業者団体等が協議に応じなければ,新規参入を阻むことが可能な制度であるといえる。

協議会法律リスト