当事者の合意を基礎とする協定方式は,協働のための典型的な行為形式である。法律に基づく協定には,特定の公益目的のための土地利用を長期的に確保するために設けられているものが多い。これに対し,自治体の条例に基づく協定には,①市民参加やパートナーシップの原則・ルールを設定するために用いられるもの(パートナーシップ協定),②協働事業実施のために用いられるもの(協働事業契約)が少なくない(大久保規子「協働の進展と行政法学の課題」磯部力=小早川光郎=芝池義一編・行政法の新構想Ⅰ(有斐閣・2011年)223頁以下参照)。
ここでは,法律に基づく協定をリスト化して掲載するが,これらの協定は,次のようないくつかの類型に分類することが可能である。
A 私人間の協定+公告・意見提出+認可/認定+承継効
私人の自主的取組みを支援するため,土地利用に関する一定地域内の所有者等の協定について,市民参加手続を経たうえで,行政が認可/認定を行うことにより,後にその土地の所有者となった者に対しても協定の効力を及ぼす(承継効)ものである。この種の協定の中には,①所有者間の協定と②所有者とNPO等との維持管理協定があり,また,一部,認可/認定や承継効のないもの(A変形)もある。A型の古典的な例は,建築協定(建築基準法)であるが,協定が更新期を迎えたときに,再度全員の合意を得るのが困難な場合も少なくない。
B 私人と行政の協定+公告+意見提出+承継効
行政が公益上の必要から,私人の所有する施設等を長期的に管理・利用する必要がある場合に活用される協定である。市民参加手続がとられることや承継効が認められていること等は,A類型の場合と同様である。そのような例としては,津波防災地域づくり法に基づく津波避難関連施設の管理協定(60条以下)や景観法に基づく景観重要建造物等の管理協定(36条以下)等がある。
C 事業者の協定+認可/認定
資源,環境等の適正な利用の促進等を図るため,事業者による自主的な協定の締結を促し,協定への参加のあっせんや協定内容の達成に必要な行政措置を定めたりするものである。その例としては,海洋生物資源の保存・管理法に基づく協定(13条以下)や沖縄振興特別措置法に基づく環境保全型自然体験活動に係る保全利用協定(21条以下)がある。後者では,活動に係る案内及び助言を業として行う者の相当数が参加すること(21条5項2号),自然環境の保全上支障がないこと等の基準に適合するものであること(同条同項5号)等が要件とされ,知事による協定内容の周知(同条9項),必要な場合の勧告(22条)等が定められているのが特徴である。
D 多様な主体の協定
2011年に改正された環境保全取組促進法に基づく環境協定(21条の4以下)は,国,国民,民間団体等,多様な主体が当事者となり,協働取組を推進するための協定である。当事者による取組の評価・公表(21条の4・2項),協定の届出(21条の5),知事による協定の法令適合性の確認(21条の5・3項)等の特徴的な規定が置かれており,今後の動向が注目される。
E その他の協定