○碧南市協働のまちづくりに関する基本条例
平成25年3月23日
条例第5号
目次
前文
第1章 総則(第1条~第3条)
第2章 基本原則(第4条~第8条)
第3章 市民と行政の協働(第9条~第17条)
第4章 市民公益活動(第18条~第20条)
第5章 地域自治(第21条・第22条)
第6章 雑則(第23条)
附則
碧南市が誕生した頃の地域社会では、住民総出の清掃活動や地域での子どもの見守りなど、顔を合わせ、あいさつを交わす、住民同士のつながりが地域を支えていました。
時代とともに、「まちをきれいにしたい」、「子どもを安心して遊ばせたい」、「老後を豊かに過ごしたい」といった願いは、様々な公共サービスとなって、私たちに提供されてきました。一方で、生活圏の拡大などにより私たちが自ら地域に関わる機会は減り、地域でのつながりは徐々に薄れているように感じられます。
衣浦港、矢作川、油ヶ淵と、水との関わりの深い本市は、台風、地震、津波といった自然災害の脅威とは無縁ではありません。少子高齢化、人口減少社会を迎えた今日、私たちの生活の安心・安全をこれからも維持していくためには、地域での日常的なつながりを見つめ直し、防災を始め、防犯、子育て、孤独といった多様化する地域課題を皆で協力して乗り越えていかなければいけません。
幸い、「まちの役に立ちたい」という思いを持った市民は大勢います。その思いを大切にしながら、誰もが気兼ねなく、気軽にまちづくりに参加できる協働の仕組みがあれば、人と人とがつながり、喜びを感じられるまちを作っていくことができるはずです。
私たちは、子どもからお年寄りまで、まちづくりの担い手である市民一人ひとりが、互いに支え合い、感謝し合うことで、この碧南市を、さらに住みよい、住み続けたいまちとして次の世代に引き継いでいきたいと願っています。この願いを実現するために、私たちは、協働のまちづくりを推進する際の基本ルールとして、この条例を定めます。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、市のまちづくりに関する基本的事項を定め、市民及び行政がそれぞれの役割及び責務を果たし、地域で人と人がつながることにより、生きがいや幸せを感じることのできる社会を実現することを目的とする。
(用語の定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する個人及び市内において活動若しくは事業(以下「活動等」という。)を行う個人又は法人その他の団体をいう。
(2) 行政 市長及びその他市の執行機関をいう。
(3) まちづくり 碧南市をより住みよいまちにしていくために、市民及び行政が行うあらゆる活動等をいう。ただし、次に掲げるものを除く。
ア 営利を目的とする活動等
イ 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを目的とする活動等
ウ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動等
エ 特定の公職(公職選挙法(昭和25年法律第100号)第3条に規定する公職をいう。以下この号において同じ。)の候補者(当該候補者になろうとする者を含む。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とする活動等
オ 公の秩序又は善良な風俗を乱すおそれがある活動等
(4) 協働 市民と市民が共通の目的を実現するため又は市民と行政が共通の目的を実現するためにそれぞれが果たすべき役割及び責務を認識し、相互に補完及び協力することをいう。
(5) 市政 まちづくりのうち、行政が担う部分をいう。
(6) 市民公益活動 まちづくりのうち、市民が自らの意思に基づいて継続的に行う社会的な利益の増進を図ることを目的とする活動等をいう。
(7) 地域自治 市民が身近な地域の課題を主体的に捉え、市民公益活動等を通じて自らその課題を発見及び解決していくことをいう。
(条例の位置付け)
第3条 市民及び行政は、まちづくりを行うに当たってこの条例に定める事項を最大限に尊重しなければならない。
2 行政は、他の条例、規則、計画等の制定及び改廃に当たっては、この条例の趣旨を尊重しなければならない。
第2章 基本原則
(基本原則)
第4条 市民及び行政は、次に掲げる基本原則に基づいて、まちづくりを行うものとする。
(1) 人種、国籍、性、年齢、思想、地域、職業等にかかわらず、互いの立場を尊重するとともに対等な関係であること。
(2) 次の世代に配慮し、将来にわたって持続可能な社会を築くよう努めること。
(3) まちづくりに必要な情報を相互に提供及び共有し合うこと。
(市民の権利)
第5条 市民は、まちづくりに関して次に掲げる権利を有する。
(1) 市政に関する情報を知ること。
(2) 政策の形成、執行及び評価の過程に参加すること。
(3) 市政に対する意見を表明し、又は提案すること。
(市民の責務)
第6条 市民は、次に掲げる責務を負う。
(1) まちづくりの主体であることを認識すること。
(2) 市政に関する情報を知るよう努めること。
(3) 自らができる範囲において、まちづくりに参加及び協力すること。
(4) まちづくりの担い手として、自らの発言及び行動に責任をもつこと。
(行政の責務)
第7条 行政は、次に掲げる責務を負う。
(1) 公正かつ公平に市政を運営すること。
(2) 効率的かつ効果的な市政の運営に努めること。
(3) 市政に関する情報を市民に分かりやすく提供すること。
(4) 市政の運営に当たって、市民の意向を的確に把握すること。
(5) 市民から出された意見、提案、要望等について、誠実に説明及び応答するよう努めること。
(6) 市民公益活動の支援を適切に行うこと。
(職員の責務)
第8条 行政の職員は、次に掲げる責務を負う。
(1) 市民全体のために働く者として、公正かつ公平に職務を遂行すること。
(2) 職務の遂行について法令等を遵守すること。
(3) 市政の課題に的確に対応するための知識及び技能の修得に努めること。
(4) 自らも市民であることを自覚し、まちづくりに積極的に取り組むこと。
第3章 市民と行政の協働
(市民と行政の協働の推進)
第9条 行政は、市民の意見を反映し効果的に市政を運営するために、市政における政策の形成、執行及び評価の過程において、市民と協働する機会を整備するよう努めなければならない。
(情報公開)
第10条 行政は、市民の知る権利を保障し、公正で開かれた市政を実現するため、別に条例で定めるところにより行政の保有する情報を開示しなければならない。
(情報提供)
第11条 市民及び行政は、まちづくりに関する情報を互いに共有するために、多様な発信手段を用い、分かりやすく提供するよう努めなければならない。
(個人情報の取扱い)
第12条 行政は、市民の権利利益を保護するため、別に条例で定めるところにより個人情報の適正な取扱いをしなければならない。
2 市民は、まちづくりに関して個人情報を収集するときは、事前に収集の目的、取扱い等について、本人の同意を得るものとする。
(市民参加)
第13条 行政は、市政の運営に当たっては、多様な立場の市民の参加を促すよう努めるものとする。
2 行政は、市民参加の方法(以下「市民参加方法」という。)として、次に掲げるものを用いるものとする。
(1) パブリックコメント(市の基本的な政策等の策定に当たり、当該策定しようとする政策等の趣旨、目的、内容その他必要な事項を広く公表し、公表したものに対して市民からの意見等を求め、提出された意見等に対する行政の考えを明らかにするとともに、意見等を考慮して行政としての意思決定を行う一連の手続をいう。)の実施
(2) 審議会等(地方自治法(昭和22年法律第67号。)第138条の4第3項に規定する附属機関を含む。)への付議
(3) ワークショップ等(市民と市民又は市民と行政がまちづくりについて協議することで、市民の意見を集約する手法をいう。)の実施
(4) 市民説明会(行政が政策等の趣旨、目的、内容その他必要な事項についての説明を行い、市民と意見交換する場をいう。)の開催
3 行政は、前項の規定に掲げるもののほか、市政への市民参加を促すための仕組みを整備し、活用するよう努めなければならない。
(市民参加の対象)
第14条 行政は、次に掲げる事項(以下「対象事項」という。)を市民参加の対象としなければならない。
(1) 次に掲げる条例の制定又は改廃
ア 市の基本的な制度を定める条例
イ 市民生活又は事業活動に直接かつ重大な影響を与える条例
ウ 市民に義務を課し、又は権利を制限する条例(金銭徴収に関するものを除く。)
(2) 市の基本的政策を定める計画の策定又は改定
(3) 広く公共の用に供するための施設の整備計画等の策定
(4) 市の基本的な方向性等を定める憲章、宣言等の策定又は改定
(5) その他行政が必要と認めるもの
2 前項第1号から第3号に規定する対象事項については、前条第2項各号に掲げる市民参加方法のうち、2つ以上を選択して実施しなければならない。
3 前2項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合は、市民参加の対象から除くことができる。
(1) 法令又は条例に別段の定めがある場合
(2) 行政が迅速若しくは緊急を要するもの又は軽微なものと認める場合
(3) 行政に裁量の余地がないと認められる場合
4 行政は、対象事項に関する案の公表をできるだけ早い時期に行うものとする。
(審議会等)
第15条 行政は、特段の事情がある場合を除き、審議会等の委員の全部又は一部を公募しなければならない。
2 行政は、特段の事情がある場合を除き、複数の審議会等の委員に同一の委員が就任する、又は特定の審議会等の委員を同一の委員が著しく長期にわたり務めることのないよう努めなければならない。
3 行政は、法令等で特別な定めがある場合を除き、審議会等の会議を原則として公開しなければならない。
(行政評価)
第16条 行政は、効率的かつ効果的な市政運営を行うため、施策、事業等の経費及び成果に関する情報を市民と共有し、市民の評価を受けるよう努めなければならない。
2 市民は、市政を公正かつ公平に評価しなければならない。
(説明責任)
第17条 行政は、市政に関する政策の立案、施策及び事業の実施並びにこれらの評価に至るまで、その経過、内容、経費及び目標の達成状況等(以下「経過等」という。)について市民に分かりやすく説明するよう努めなければならない。
第4章 市民公益活動
(市民公益活動の促進)
第18条 市民及び行政は、市民公益活動について理解を深め、尊重するとともに、市民公益活動の促進に努めるものとする。
2 行政は、市民公益活動を促進するため、次に掲げる施策を行うものとする。
(1) 情報を収集及び提供する施策
(2) 学習及び体験機会を提供する施策
(3) 活動場所を提供する施策
(4) 人材を育成する施策
(5) 市民相互の協働を促進する施策
(6) 前各号に掲げるもののほか、市民公益活動の促進に必要と認める施策
(財政支援)
第19条 市長は、市民公益活動を促進するため必要があると認めるときは、当該市民公益活動を行う市民の自発的意思及び自立性を損なわない範囲において、必要に応じた財政支援を行うことができる。
2 市民は、行政から財政支援を受けて活動等を行う場合においては、経過等について市民に分かりやすく説明するよう努めなければならない。
(参入機会の確保)
第20条 行政は、市民公益活動を行う市民に委ねることにより効率的かつ効果的なまちづくりができると判断できる事務事業について、市民に市政への参入機会を与えるよう努めるものとする。
2 前項の規定により市政に参入した市民は、経過等について市民に分かりやすく説明するよう努めなければならない。
第5章 地域自治
(地域自治の推進)
第21条 市民及び行政は、地域自治を推進するため次に掲げる仕組みを協働して整備するものとする。
(1) 地域でできることを地域で実行するための仕組み
(2) 地域の意見を市政に反映するための仕組み
(地域まちづくり組織)
第22条 市民は、地域のあるべき将来像を定め、地域自治を包括的に推進するための組織として、地域に一を限り、当該地域のまちづくりを行う組織(以下この条において「地域まちづくり組織」という。)を設置することができる。
2 地域まちづくり組織は、当該地域の全ての市民に開かれたものとし、当該地域の計画的で継続性のあるまちづくりに取り組むものとする。
3 市民は、地域の課題を共有し、協働して解決していくために、地域まちづくり組織の活動に積極的に参加及び協力するよう努めるものとする。
第6章 雑則
(条例の検証等)
第23条 行政は、この条例の検証等に当たっては、市民との協働で行うよう努めるものとする。
2 行政は、前項に規定する検証の結果、この条例及びこの条例に基づいて行われる制度等の見直しが必要と認められる場合には、速やかに必要な措置を講ずるものとする。
附 則
この条例は、平成25年4月1日から施行する。